潮の音が聞こえるところで絵を描きながら生きていきたい。
そう思い 生まれ育った九十九里・上総一ノ宮に戻って14年目。
「めぐりゆく」をテーマに 外房ののどかな自然と
大きく広がる海景に身をゆだねながら描き続けてきました。
ご存じのように 2011年3月11日、大きな揺れと共に起こった
津波。東北の被害に比べればほんのわずかなものではありますが
九十九里にも大きな波が繰り返し繰り返し押し寄せました。
もし、震源地がわずかでもずれ 同じ波が来ていたら
今頃、アトリエは無い。命だって無い。この展覧会も無い。
心のよりどころであったはずの海が恐怖に変わり不安の中、
新たに生まれた「めぐりゆく」の思いと
同時に大袈裟ながら生き残れたことへの感謝。
沢山の人の命を奪った波に恐怖を覚えつつ過ごした日々。
でも 約一ヶ月後の晴れた朝に見た海はやはり美しかった。
涙が出るほど美しかった。
心は 冷静さと恐怖の思いとない交ぜに
だからか 気持ちも体も敏感に
そんな中、過ごした、鴨川・金束での
真夏の 森の中での時。
静けさと共に
わき上がる小さな生き物と
森の声と大地の力を強く感じたのです。
そして、視覚だけでなく
触覚 指先に伝わるものを求めるようになりました。
こどもが無邪気に絵の具を指先に楽しんで描くように
数え切れない魂が溶け込んだ 海に山に
めぐりゆく思いを込めて描きました。
しづかに しづかに
とおいところへ